ずうっとずぶとくずうずうしく

いろいろあってミャンマー暮らし

そんなもん

ラムサール条約という国際条約がある。

 

こんな書き出しだと、なんだか知識人のブログみたいだ。このあと、その内容を細かく説明したり、分かりやすい例えを使ってみんなに理解できるような表現を連ねていくのだ。知識人のブログを読み漁ると、だいたいみんなそんな感じで書いてあって、読んでいて知識欲が駆り立てられる。

 

僕はそこまで上手に書いたり出来ないので、こんな書き出しを今後一切用いることはしない。

 

用いるって表現も、なんだか知識人みたいだ。普通に「使う」とかでいいのに、あえて「用いる」って使うあたり、頭が良さそうに見える。

 

話は逸れたけれど、今日はラムサール条約に関する話をしたい。

湿地の保存に関するこの国際条約は、水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守るために結ばれた。

 

湿地をみんなで守ろうぜって取り決めだ。湿地は、よく埋め立てられてしまいがちだ。湿地をイメージしてみてほしい。水だまりがいっぱいあって、なんか蚊とか沸いてくるし、住みたいけどびちょびちょだ。こんなところ、コンクリとかアスファルトで埋め立てて、住宅利用したり別の農業用地に変えてやりたいぜ!って思ってしまう。

 

でも、こういう湿地は、生き物の重要な環境でもある。水鳥っていうと具体的に何を思い浮かべるだろうか。カモとかカイツブリとかサギとか、なんかそこらへんのイメージがあるんじゃないか。その通りだ。あとチドリとかフラミンゴとか、なんかそういうのとかか。その通りだ。

 

湿地の埋め立てだと、こういう生物たちの環境を著しく破壊することになってしまうので、おいおい、よくないんじゃないの、ってことで国際条約になった。なんで国際的な取り組みになるかっていうと、湿地って、国をまたいで存在してたりする。A国だけがしっかりやってもB国が全部埋め立てました!なんてやっちゃうと、困るわけだ。

 

 

そんなラムサール条約で保護された地域が、ミャンマーにはいくつか存在する。

 

今回は、モーヨンジー湿地を見ていこう。

 

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ヤンゴンからあっというま、1時間半くらいで着けるとこにある。

朝から車でガンガンと音楽をかけて行けば、ちょうどいいところで終わる距離だ。ちょうどお尻が痛くなる手前くらいの時間だ。

 

大した趣味ではないが、バードウォッチングが好きだ。こうしたミャンマーにいる鳥はどんな種類なのかを考えると、やっぱりバードレナリンがすごく沸く。

 

 

この日は、うちで採用していたドライバーのスティーブと一緒に行った。こないだ地方出張の時に、寝ないで酒を飲みすぎて翌日使いものにならなかったスティーブとだ。叱ったら機嫌を悪くして仕事の途中でどこかに失踪してしまったスティーブとだ。

 

この時は、まだまともだったような気がする。

 

「スティーブ、女の子見てないで、車運転するときは前を見て!!」

 

そういえば前からこんなだった。

 

 

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さすがラムサール条約で保護されているだけあって、貴著な留鳥や渡り鳥が見られるようだ。ミサゴとかペリカン、カモにトキにサギ。湿地という潤沢な生態環境を垣間見るには十分すぎる場所だ。

 

「スティーブは鳥すき?」

うん、タレが好きだよ

「焼き鳥の話じゃねーよ。だったら塩派だよ僕は」

 

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「スティーブ、そういえば奥さん妊娠したんだって」

そうだね

「よかったじゃん、おめでとう!!」

次は男の子がいいなー、一人目が女の子だったからな

「なんで」

ほら、一富士二鷹じゃん

 

なんで一富士二鷹三茄子を知っているのかわからないけど、それを言うなら一姫二太郎だ。

 

スティーブは、北海道大学に留学をすることが決まっていたお坊ちゃんだったが、2週間で日本語の勉強に飽き飽きし、札幌から羽田に飛行機で逃亡し、違法労働を続けていた。6年以上日本にいたこともあって、日本語でのコミュニケーションは困らない。いや、困るわ。表現が独特すぎて、人の言いたいこと汲み取り選手権の県代表の僕でも、何が言いたいのかわからないときがある。

 

「なあスティーブ、今の農民、なんて言ったんだ」

ほら、なんかさぁ、たぁのなかでさぁ、しごとをするじゃん

「え?」

それでさぁ、やっぱりむかしから、やっぱりたいへんなこといっぱいあって、そんなもん

 

よくわからない。

農業が昔から大変らしいんだけど、「そんなもん」で締められてもどんなもんなんだ。そんなもん分かるか。

 

 

生態系を守っていくことは難しい。人間の生活それ自体のみを考えると、ありとあらゆる物を消費するだけになってしまう。そこにちょっと自然への配慮が出来れば、人間以外の、例えば鳥さんだったり、虫さんだったりが、なんとなく過ごしやすくなるはずだ。

 

その結果、僕らの生活が、ちょっと良くなることもあるし、もしかしたら不便なままかもしれない。でもやっぱり、頭を使ってなんとかするのが人間という生物に与えられた力なので、もうちょっと足掻いてみたいものだ。

 

「わかった?スティーブ?」

そんなもん

聞いてなかったやろ!!

 

 

モーヨンジー湿地のオススメ訪問時期は、ちょうど11月くらいになる。1か月後の、ちょっとした小旅行、いわゆる観光地に行って背中を伸ばすのもいいけど、こうした学びのある場所に足を伸ばしてみるのも、また良かよ。