ずうっとずぶとくずうずうしく

いろいろあってミャンマー暮らし

鳥になれたら

水祭りが終わったミャンマーは、日常に戻りつつある。17日の新年を迎えた後、18日からは通常運転となった。長期休みを取っているお店や会社はあるようだが、今週徐々に日常に戻って行った。レストランの従業員がまだみんな戻ってこなくて、慌ただしい中ひたすらビールのおかわりを頼む。

 

ミャンマーではよくあることだが、長期休みを経た後は、だいたいの従業員が来なくなる。長期休みを使って田舎に戻って家族や友達と過ごした後、何故か連絡が途絶えるのだ。新規採用をした場合でも、やっぱり辞めさせてください、ということもある。本人からではなく、親や親戚から連絡をよこしたりする。一番ひどいなと思ったのは、自分1人では辞めづらいから、他の従業員に根も葉もない噂を流して巻き込んで辞めていく人だ。

 

一方で、しばらくしたら、何も悪いことなどなかったように、ケロッとした顔で戻ってくることもある。「結婚して子供が生まれたので、またここで働かせてください。あ、でも、生活費がないので給料前払いでお願いできますか。できれば3ヶ月分で。すみません」「子供ができて、その出産のためにかかる病院の費用がないから、ちょっと助けてくれませんか。給料前払いで後は天引きしてもらって構いません。すみません」などと、どの口が言えるのか、と驚愕することがある。ちなみに、このお金は戻って来なかった、というか、お金を渡した後、案の定、目の前から消え失せた。呆れて怒りもせず、涙も出なかった。なんでこんな奴らに結婚相手がいて、善良な僕には見つからないんだろうか。そう考えると涙が出てきた。

 

 

基本的には、ミャンマー人と日本人の価値観の違いとしてあるのは、優先順位の違いなんだろうな、と認識している。ミャンマー人にとって、一番大切なのは、家族だ。親や子供、親戚が一番大切。その人たちを裏切らなければ、基本的には何をしてもいいんだ、くらい思っているんじゃないかと思っている。

 

会社というのは、あくまで自分の家族の食い扶持を確保するための手段でしかなく、例え会社を裏切ってでも、家族を守るためなら仕方ないとして、お金をだまし取っていく。または、自分の責任など放棄して家族と一緒にいることを選択する。

 

 

経営者側からすれば、相当きついことだけど、会社に縛られすぎないでいられる、という面ではうらやましいな、と思う。金をだまし取ったりするのは良くないことだけど、辛くなったら思いつめる前にサッと辞められてしまうそのフットワークは、正直うらやましい。

 

会社に縛り付けられすぎて自分の生活の周りが疎かになってしまう日本人だっている。セクハラやパワハラを受けても言い出しにくい空気もさることながら、簡単には辞めます、と言えずに嫌なことを貯めていく人だっている。

 

日本にいて会社員として働いて、かつミャンマーで経営者として働いていて感じるのは、どちらも良くないな、ってことだ。いい按配で働くことって出来ないもんだろうか。個人のマインドもそうだし、会社や社会の風土もあるんだろう。

 

従業員と経営者のどちらもが楽しく幸せにいられるには、どういうアクションが、どういう制度があればいいのか。そういうことを考えながら、ミャンマーの新年を過ごした。

 

 

 

そういえば、3月から独立してミャンマーの会社の経営者をしている。ビジネスを自分で作り上げて、社員を採用して、仕組みを作っていくことはすごく難しいけど、すごくやりがいがあるし、サポートしてくれる人の力もあって充実している。

 

自分の好きな時に自分で選択ができるのは楽だ。カレーをぐつぐつ煮込みながら、メールの返信をしたりできるのが、被雇用者とは違うところだな、とあれこれ考えていたら、おいしいカレーはできたけどメールの返信はまだできていない。

 

 

独立していきなりだけど、2社の経営をしている。

メインは、流通の会社だ。これまで培ったネットワークを存分に活かしていくつもりだ。特に、農民が抱えている課題を解決することを目的としてネットワークを構築し、いい商品を流通させていく。

 

名前は、「アルバトロス」にした。日本ではアホウドリと呼ばれてバカにされる鳥をあえて選んだ。アホウドリは、飛び上がるまでは時間がかかって、子供でも捕まえられるほどノロマだ。だけど、一度飛び上がると、そのグラインド能力で、どこまでも飛んでいける。その美しさから、オキノタユウ(沖の太夫)と呼ぶ地域もあるし、その飛行距離から、ゴルフのパーよりも3打少ないスコアを出すことを、アルバトロスと呼んでいる。

 

流通ネットワークを遠くまで、ソリューションをもっと遠くまで、という意味でアルバトロスを採用した。我ながらいい名前をつけたな、と満足している。

 

 

もう一つは、「イーグル」だ。

こちらでは、今後はスタディツアーを企画、運営していく会社にしようと思っている。なんとなく、これって良くないよな、っと思われている問題を、社会問題として、もっと掘り下げていくためのツアーだ。同時に、ミャンマーで起きている問題を発信できる会社だ。ワシのように、社会を上から巡回して問題を見つけて、それをもっとわかりやすく人に伝えるようにする。

 

なんとなくこれって問題だよね、って思ってることを、実際の現場への訪問を通じて、構造的に理解していき、対応策を提案していけるようにする。ミャンマー人のインターン生たちを巻き込んで、まずはヤンゴンにある様々な問題をピックアップしてもらい、一つずつ掘り下げている。

 

 

ミャンマー人と日本人のインターン生も増えてきていて、だんだんとできる範囲が増えていく。まだまだ社会全体を見れる目もないし、飛び立つにはまだまだ助走が必要だけど、長く助走を取った方がより遠くに飛べるって誰かが歌っていたので、体力をつけながら、自分の目指すところを目指して走り続けようと思う。