ずうっとずぶとくずうずうしく

いろいろあってミャンマー暮らし

面白い話

ねぇねぇ、面白い話があるんだけど

 

だいたいこういう話し方をするやつに面白い話はできない。面白い話をする、っていうハードルの高さは、思っている以上に高い。そんな瞬発力もジャンプ力もないのに、なぜ「面白い」バーを高いとこに設置するのか。

ただ、ひたすら事務所で会計まとめの仕事をさせられていて若干うんざりしていたところだったから、気分転換に聞いてみたい気持ちもあった。そうだ。自分から面白い、というくらいだから、相当面白いのだろう。いきなり斜に構えてしまうのはよくない。スティーブは、僕が何かを答える前に話し続けた。

 

昔お父さんが死んだ時にさ

 

もうすでに面白くない。というかやっちゃいけない走り出し方じゃないか。一度大阪で磨かれてこい。走り出し方を磨かれてこい。

 

お葬式に来てくれたお父さんの友達がいたんだけど、その人から久々に昨日連絡があってさ、ミャンマーの金鉱脈があるんだけどどう、って言われたんだけど、面白くない?

 

え?そういうこと?面白いってそういうこと?FunnyじゃなくてInteresting的な?いや、さすがにそれはどうなんだ。というかお父さんが死んだってくだり、いらなくない?父親の友人から久々に連絡があって、ミャンマーの金鉱山の話があるらしいんだけど、かず、興味ある?とかでよくない?

 

「金?」

 

一応聞き返しておいた。作業中のBGMに対してなにか話しかけたり答えたりするのは奇妙に思えたけれど、投げられたボールをそのまま見逃し三振にしたりはしない。スポ少で野球やっていたころ、コーチをやっていた父親に、せめてバットくらいは振れとよく言われたものだった。

 

そう!金!もし興味あるなら紹介してあげるけど

 

なんで上からなんだ。別に興味ないことないけど、なんかそれに答えるのって負けた気がする。そんなことより、今は会計の支出データと領収書が一致していなくてイライラしている。会計は、プロジェクト別にまとめておくのが一番いい。出口と入口を一つにして、使った分の領収書をまとめておくだけだ。これをするだけで、あとが数段やりやすくなる。

 

「別にいいや。前のでもう懲りたし」

 

以前、スティーブに紹介してもらった金鉱脈の所有者たちにいざなわれて、外国人が入っちゃいけないようなところに連れていかれたことがあった。結局、その金鉱脈のものはあんまり質が良くなかったみたいで話がおじゃんになった。そのことが、金鉱脈の所有者を怒らせてしまって、関係が悪くなってしまった。今では連絡は取っていないが、ちょっと身にあまるようなことはしないようにする、という教訓を得た。

 

そっか。他にも面白い話あるよ

「いいよ、今は目の前の仕事しっかりやるだけだよ。そんな暇があったら手伝ってくれよ、この会計作業が終わらないの、お前が領収書はやく出さないからだぞ」

ねぇ見てこれ、かわいい子だ

「ふざけんな」

 

スティーブは、通信費を無駄にしてかわいい女の写真だったり、車の写真だったりを漁ることしかしない。電話代、そういうことのために支給してるんじゃないからな。

 

会計の単純な仕事と、なぜか問題が発生してしまう作業構造にイライラすることはさもありながら、それを上回る形でイライラさせてくれる。仕方ない。こうなったら、面白い話を引き出して、明るい職場にしよう。

 

 

「ねぇスティーブ、面白い、笑える話をしてよ」

いいよ

 

なんなん。なんなんその二つ返事。間髪入れずとはこのことだわ。

 

昨日、部屋の掃除してたら、先月分の領収書がもっと出てきた。はい、かず。これ。清算してよ

 

「あははは!!!笑えるわ!!!

 

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